恋愛は心の問題と思いきや、実は「脳」も深くかかわっていることをご存じでしたか?
恋愛・結婚、夫婦関係などについての「お悩み」について、各メディアでご活躍中の脳科学者・細田千尋先生にお話をうかがいました。このシリーズは、5回にわたってお送りします。
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第5回(最終回!)のお悩みは、「周囲から“別れた方がいい”と言われる」です。
玲さん アルバイト 24歳
大学のサークルで知り合った今の彼とは交際1年。ちょっと不良っぽい雰囲気で、同じサークルの女の子にも人気がある人だったので、憧れの存在の人から。「付き合わない?」って言われたときは嬉しくて信じられませんでした。嫌われたくない一心で、洋服の好みやメイクも彼の趣味に合わせてきました。
付き合い始めて半年位した頃から「他の女の子と一緒に歩いているところを見た」という話も耳に入ってきて、周囲から「あんないい加減な人とは別れた方がいいよ」と言われることも多くなってきました。考えてみたら、デートをするときはいつも彼の都合を優先してきました。「来れる?」と言われたら何をおいても駆けつけます。でも「忙しいから」と言われて1カ月以上デートしないときもあります。
なんだか私、彼にとって都合のいい存在になっていないかなと不安でいっぱいになってきました。彼の気持ちを確かめたくても怖くてできない。私は、まだ彼のことが好きだしどうしたらいいのか悩んでいます。
<細田先生の分析>
周囲のお友達も心配して別れた方がいいと忠告するほどなんですね。でも人は、「見てはだめ」などと言われると、余計に見たくなるものなんです。
触ってはダメって言われると余計に触りたくなる心理。誰にも覚えがあると思うのですが、これは恋愛も同じで、周囲から「あんな人とはさっさと別れた方がいいよ」と言われると余計に心が離れられなくなる心理状態を「カリギュラ効果」といいます。
例えば、昔話の『鶴の恩返し』や『浦島太郎』もそう。「絶対に部屋を覗かないでくださいね」と言われたのに見てしまう、「玉手箱を開けてはいけませんよ」と言われたのに、玉手箱を開けてしまった浦島太郎は、白髪のお爺さんになってしまう。これらもカリギュラ効果のなせるわざなのです。
同様に周囲から「別れた方がいい」と言われれば言われるほどた玲さんは、「あんな人」と思いながらも、逆に「別れたくない」という気持ちが強くなってしまっていませんか?
でも、今度は玲さんが、この「禁止されたり、制限されたものを逆に求めてしまう」という「カリギュラ効果」を使う番かもしれません。
例えば、何か面白い話をしている最中に時間がなくなってしまい、「続きは今度会ったときに話すね」と言われてしまうと「え、最後どうなったの?」なんて気になってしまいますよね。
1つの例をお伝えしましょう。
私の友人のケースです。
彼は、ジャニーズ系のイケメン医師で、多数の女性とデートを楽しんでしました。ところが、そのうちの一人の女性だけは、彼女の部屋に上げてくれるまでに時間がかかった上に、喧嘩をしたら彼女から一切連絡が来なくなったそう。それまでに彼は、デートにプレゼントにとずいぶん投資もしているので「コンコルド効果」も働き、喧嘩の後に彼女から全く連絡が来なくなると気になって仕方がない状態に。
そうしているうちに自然と彼女が本命の存在になったのだそう。ところが彼女は、付き合ってから掃除や洗濯、身の回りのことを全て甲斐甲斐しく世話をしてくれていたのに、なぜか食事だけは一切作ってくれなかったのだとか。疑問に思った彼が、彼女に聞くと「全部満たされると結婚しなきゃって思わないでしょう」と答えたそうで、彼はあっという間に彼女と結婚しました。
このようになんでも彼の都合に合わせるのではなく、時には冷たくするなど、あなたのことが気になって仕方ない状況を作りましょう。第1回でお伝えした「損失回避」により、「あなたを失いたくない」と思わせるのです。
ただし、彼はモテるようですから、あまりやりすぎると「なんだ、面倒くさいな、もういいや」ってなってしまうので、ほどほどに。
それでも彼の気持ちが自分にはもうないなと確信したら、思い切って決断しましょう。
【細田千尋先生】
東京大学大学院総合文化研究科研究員/科学技術振興機構さきがけ研究員/帝京大学医学部生理学講座助教。東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科認知行動医学卒業後、英語学習による脳の可塑性研究を実施し、研究成果が多数のメディアに紹介。その研究をきっかけに、「目標達成できる人か?」を脳構造から判別するAIを作成し特許取得。現在は、プログラミング能力獲得と脳の関連性、 Virtual Realityを利用した学習法、恋愛と脳についても研究をしている。