恋愛は心の問題と思いきや、実は「脳」も深くかかわっていることをご存じでしたか? 恋愛・結婚、夫婦関係などについての「お悩み」について、各メディアでご活躍中の脳科学者・細田千尋先生にお話をうかがいました。
第1回のお悩みは、「彼が結婚を決意してくれない」です。
美香さん 会社員 28歳
交際して3年になる3歳年上の彼がいます。共通の友人が主催したパーティで知り合った彼は、大らかな性格で誠実。男性友達も多くて、仲間から信頼されている彼のことが大好きになりました。もう付き合って3年になるし、私はできたら30歳までに結婚したいなと密かに思っています。
自分で言うのもなんですが、私はお料理が得意でキレイ好きで、絶対にいい奥さんになる自信があります。週末は、独り暮らしの彼のマンションに行くたびにお料理を頑張って、気が付いたところはお掃除もしたり、「いい奥さんになれるよアピール」をしているのですが、彼の反応は今一つ。
かといって「私に対する愛情が冷めてる」という感じでもなく、「大好きだよ」と言ってくれるのですが、なかなか「結婚」を言い出してくれない彼の本心がわからなくて悩んでいます。
<細田先生の分析>
結婚を前にした女性の「マリッジブルー」と似たものかもしれませんね。女性は、結婚によってそれまで育ってきた環境が大きく変わることへの不安、また家族と離れ離れになる喪失感のようなものが相まって、一時的に結婚に対してネガティブな感情を持つことで知られています。
おそらく彼も「結婚によって失われるもの」に囚われているからではないかなと思われます。結婚をするかどうか迷って、なかなか決断ができない人の多くがこれにあてはまるのですが、心理学で「損失回避」という心理状態を指します。
例えば、次の場合、AかB、あなたならどちらを選びますか?
A:確実に9,000円もらえる
B:90%の確率で10,000円もらえるけど、10%の確率で何も貰えない |
A:確実に9,000円失う
B:90%の確率で10,000円失うけれど10%の確率で何も失わない |
いかがでしょう?
最初の「得るもの」については、確実な方のAを、「失くすもの」については、ちょっとギャンブルにはなりますが、失う額がなるべく少ないBを選んだのではないでしょうか。
つまり、人は利益を得る幸せよりも、損失による苦痛をより強く感じるものなんです。
だからその彼もいざ具体的に結婚を考えてみると、独身なら自由に使える「お金」をはじめ、「友人と過ごす、あるいは趣味の「時間」が結婚によって、失われてしまうかもしれないということを心配して決断できないでいるのかもしれませんね。
結婚したら当然、お金も時間も分け合うパートナーの存在がありますから、現在の独身のまま同じというわけにはいきませんね。もちろん、これは女性も同じですが。逆にこの「損失回避」を逆手にとって、このままでは「私を失うよ」という風にもっていけるといいですね。敢えてしばらく連絡を取らないようにするとか。
彼にとって時間よりもお金よりも失いたくない存在が、あなたであることに彼に早く気付いてくれるといいですね!(終)
次回は、2月1日更新の予定です。お楽しみに!
【細田千尋先生】
東京大学大学院総合文化研究科研究員/科学技術振興機構さきがけ研究員/帝京大学医学部生理学講座助教。東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科認知行動医学卒業後、英語学習による脳の可塑性研究を実施し、研究成果が多数のメディアに紹介。その研究をきっかけに、「目標達成できる人か?」を脳構造から判別するAIを作成し特許取得。現在は、プログラミング能力獲得と脳の関連性、 Virtual Realityを利用した学習法、恋愛と脳についても研究をしている。