商社マンとして渡欧。待ち受けていたミッション
■毎年巨額の赤字でも見て見ぬふり!?
地理的にヨーロッパの中央に位置するチェコのプラハに赴任し、ヨーロッパ全体の物流事業を管理する業務についていました。社内で毎年多額の赤字を10年以上出し続けているフランスの1つの部門が問題になっているときでした。赤字の金額は、毎年都内の一等地にマンションを買えるほど。「こんな事業、継続させるべきではない」という意見もありましたし、僕自身もこれは経営のミスだと感じていたのですが、大企業だからなのか、本社はもちろん、ヨーロッパ支社でも「このくらいの赤字なんて大したことはない」という感覚で、手をこまねいているだけというのが実情でした。
さらに悪いことに、組合が強いので賃上げ要求のままに従業員の給料を上げていたり、作業品質がとても悪いのに危機感が低く、改善するという意識がないので、お客様が離れていくという状態にありました。従業員もそんな状況に慣れていて、何か気に入らないことがあれば、すぐストライキをするんです。対して経営側も、ストライキをされることを恐れて、毎年の賃金交渉では組合から提示されるがままに給料をアップするという完全な悪循環の図式ができていたんです。
もちろん危機感を抱き、向上心を持って一生懸命働いている人たちもいました。でも他の部署から「あの赤字のところね」「あのストライキばっかりやっているところね」って陰口をいわれるようなことが続くと、彼らもいたたまれなくなって、辞めていくんですよ。
■ラテンだから!?危機感のない従業員たちの姿に驚愕
国民性なのか、職場の環境が原因なのか一概にはいえませんが、彼らは本当に規律に対しての意識が低いんです。日本人に「10分間の休憩」っていえば、ほとんどの人10分以内に戻ってきますよね。でも彼らは戻ってきませんから(笑)。24時間オペレーションの職場だったんですが、夜22時くらいに現場に行くと、みんな仕事もせずにテレビを観て、平気でお酒を飲んだりしているんです。それくらいのんびりした空気なんです。
初めて賃上げ要求を拒否した責任者に
■言いなりだった賃上げ要求に突き付けた初めての「NO」
「これではだめだ。なんとかしないと」と感じた僕は、組合の賃上げ要求に「NO」を突き返しました。賃上げの要求を拒否した初めての部門責任者だったようです。もちろん、単に拒否するのではなく、日々従業員とのコミュニケーションを取っての上のことです。ただそのNOを突き付けた相手は、学生インターンの時代に同じ職場だった人たちなんです。一緒にサッカーをしたり、僕を可愛がってくれて、もちろん顔も名前も知っている人たちでした。
学生時代に親しく接していた人たちに厳しい態度で臨まざるを得ない立場になった高橋さん。どんな風にこの難局を切り抜けるのでしょう!