第12回 お礼を言いたいのです
2019年になりました。今年もどうぞよろしくお願いします。
でも年始早々、私は大好きで大切な親戚のおばさんを亡くしました。
私が住んでいるのが大阪で、叔母は神戸でしたから行き来もよくしていましたし、大変愛に溢れる方で本当にお世話になりました。
本当はこの命日は10年前に訪れているはずでした。
10年前に余命三ヶ月を告知されていたからです。
某有名病院から告げられました。
「ただ一つこの手術を受ければ…」
と差し出されたプランは初症例であり前例がない。
そして言い方は失礼ですが、食べることも喋ることもできない
改造と言ってはいけませんが、この手術は受けることは難しい、
でもやはり、「生きていて欲しい」と家族は願っていました。
おばさんの娘に当たるお姉ちゃん(再従兄弟だけどそう呼んでました)も、
大好きな母親の余命宣告に疲れ果てていましたから、「まだ生きていて欲しいけれど何も考えることができない」と、憔悴していました。
私は薄い知識で“再生医療”にかけました。
保険適用外ですから莫大にお金はかかるものの、
幸いにも経済的には余裕があった家族でしたから、病院側の話を一緒に聞くことになりました。
でも、再生医療も当時はまだまだ認知度も低ければ、本当に効力があるのかわからないもの(今も私はよくわかっていないと思います)。
でも、「愛する人をなんとか」と思うお姉ちゃんの気持ちも考えれば
私もリサーチしてなんとか方法はないかと探り、
あるクリニックに行き着きました。
一人の男性のドクターが相談にのってくださることになりました。
もちろん再生医療を受けるための説明です。
保険適用外の医療をしている人はチャラいと、その当時かなり失礼な先入観を持っていた私は、先生のお姿を見たとき
「うわ、チャラい! やばいのきた!」と率直に失礼に思ってしまいました。
しかもかなりの大阪弁だし、ちょっとイケメンだし(関係ない)
治療費は、ワンクール130万だったと思います。それを何度か。
「でも完治するものではない」。
そう聞いて「そうだよね、知ってる・・・」と思いながら・・・
でも、その後私たちは天の声を聞くことになります。
先生が
「オペのプラン、ある?」と聞かれたので書類をお見せしたところ
「ここからは俺の独り言やねんけどさ」と続けられ
「このオペ、やめとき。俺のおかんやったらやらへんわ。
「それと放射線もう、当てられへんって言われた言うてたけど
それは違うんちゃうかな。ピンポイントで当ててもらい。
君(私に)、その病院探せそうやから、探し。リサーチして突っ込み」
と言われました。
私たちは、その高額な医療を受ける覚悟を持ち、しかも余命を少し延ばすことだけしか期待せずに行きましたから、先生のその言葉にポカンとしてしまったものの、「まだいける」と思い私は関係各所にお願いして、なんとか治療をしてくださるところを見つけることができました。
先生は去り際、
「君ならできるやろ。そして、これは内緒やで! 俺もさ、立場があるからさ。じゃね!」
と。
「君ならできる」という言葉。後から思い返せば嬉しかったな。
かっこいい…。
何がって、先生の利益になるかといえば何にもならない。
彼は自分の立場よりも人を救うと言う医師の本分を優先させてくれたのです。
それが人として、医師としての本当の姿ではないかと。
おかげさまでピンポイントで当てる放射線治療は成功し、
余命3ヶ月は10年と延び、叔母は、2019年があけてすぐの先日天に召されました。
あの時、先生の独り言というべき天の声は私たち親族一同の祈りを叶えてくださいました。
そしてその先生は医師でありながらも、すでにその当時パラレルキャリアで一般企業の役員としてもお仕事されていました。
天寿を全うしたおばさんに代わり、お礼が言いたいのです。
自分の立場や利益を度外視して、人を救うことをしてくださった
先生。名前がわからない・・・どうされているかも知らない・・・
この場をお借りして御礼申し上げます。
そして私も、誰かの何かためになれるような仕事をして行きたいと思います。
次回の更新は、2019年2月20日(水)です。お楽しみに!
RICAさん
1973年生まれ。45歳。
大学時代から高級セレクトショップで働き、さまざまな人間模様を目にする。その後、国立大学秘書、人材派遣業を経て某電鉄系会社にて人事部人材育成を担当。現在、フリーで研修、時々販売員をしている。研修内容は、「マナーの前にまず躾」「気持ちで動く、働く」をモットーに伝えている。得意分野は医療、ファッション、社会問題、美容とさまざま。