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「しくじりアラフォー 僭越ながら申し上げます。人生のたしなみ」第2回


第2回 忘れられない 女性(ひと)。人を育てるということ

そのひとは、ご存命ならまだ30代半ばであったと思います。

私が人材育成担当として仕事をしていた時、

いえ、入社前から彼女のことは知っていました。

とある店舗のアルバイトさんで元気がいっぱい。

声はでかい。

呼び込みすごい。

 

彼女はもう、何年もその店舗も含め周辺のチェーン店舗で

働いていたので私は顔を覚えていました。

巡り巡って私は、彼女の勤務する店舗の企業へ

人材育成担当として入社することになりました。

 

彼女は私が入社後、間も無くアルバイトから社員に登用となり、

たまたま私の研修を受講することになりました。

何だか不思議な気分ですが、頑張っていた姿を一般客としても

見ていたので嬉しかったんですよね。

研修終了後、彼女に

「私、あなたを知っていました」と告白しました。

 

彼女は

「そうですよね!私もなんです。よくお越しになっていたお客様だったから。」

と言ってくれたんです。

しばらくの世間話の後、彼女は私に

「でも、嬉しいんです。この会社、研修もちゃんとするようになって。

なんか、ちゃんとしてるって感じで」

と言ってくれました。当時の私は、外部入社だったため、

既に在籍している社員からは

「お前に何がわかる」という目で見られていた上、

研修アンケートでも結構ボロカス書かれていました。

 

何でも立ち上げ時というのはそういうもの。産みの苦しみがあるんです。

 

だからその時も、私たちの話を聞いていた男性社員が

「でもなー、店も忙しいのに呼び出してさー、売上あげるのが先やろ!」

と言ってきました。

彼女は

「そんなことありません!中山さんだって一生懸命してくれてるんです!」

と反論してくれたんです。

涙が出る思いですよ。それから私達は、社内で会うたび立ち話を

仲良くする関係となっていったのです。

 

当たり前だけれど、その日は突然でした。

朝、出勤すると私の席の後ろの労務関係の人たちが騒がしい。

どうしたかな?と思っていた矢先

雑音は聞こえず、その言葉だけが耳に入りました。ドラマみたいな本当の話。

 

「佐藤さん(仮名)、高速バスの中で亡くなったってことですか?」

 

今・・・なんて言った?振り返ると労務関係の社員が私と目が合い、

彼は小さく頷きました。

彼女は20代半ばで天に召されて行きました。

忙しい中、やっと取れた有給を使って楽しみに東京へ行く

深夜バスの中で。1人で。

 

私は、こんな若い方を身近で亡くしたことはなかったし、ましてや、

応援してくださっていた人を失ってしまいました。だからせめて、

彼女が、「一生懸命やってくれてるんです」と言ってくれた言葉通り、

私は研修に手を抜いたことはありません。

 

人材育成担当をしているとある種、花形的に見られることもあります。

「教えている」というように見えるからでしょう。

大勢の人の前で話すからでしょう。

いろんなイメージがそうさせることもあります。

 

でも私は、この経験を通じて人材育成担当とは、育ててもらうもの、

受講生から私達は学ぶのだと思いました。決して自分にスポットが当たらぬよう。

 

今でも忘れられない。

入社当時の研修デビュー時は酸素ボンベを持ち込んでやりました。

緊張と不安と、私も始めての仕事だったから。過呼吸になってしまうんです。

 

そんな中でもらった彼女からの言葉は私を育ててくれたんです。

育て、育てられ、支えて、支えられる。

生きることも同じこと。

 

きっとこの記事を読んでくださっている皆さんにも

私は育ててもらうんだと思うのです。

 

人を育てているとおごるなかれ。

 

私はしくじっってもこのことだけは忘れないのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

RICAさん

1973年生まれ。44歳。
大学時代から高級セレクトショップで働き、さまざまな人間模様を目にする。その後、国立大学秘書、人材派遣業を経て某電鉄系会社にて人事部人材育成を担当。現在、フリーで研修、時々販売員をしている。研修内容は、「マナーの前にまず躾」「気持ちで動く、働く」をモットーに伝えている。得意分野は医療、ファッション、社会問題、美容とさまざま。

 

 

 

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