映画さながらのシークレットミッション
■もしストライキが起きていたら?準備していた秘策とは?
ただし僕は、ストライキになったときのために実は準備をしていたんです。日本の社長にかけあって、万が一ストライキで物流が止まっても大丈夫なように、本当の倉庫から50キロほど離れたところに隠し倉庫を借りていたんです。そのための従業員を雇い、取引先にも何も言わずに商品を搬入してもらって。仮にストライキが起きても、そこから出せるようにしておいたんです。結局ストライキは起きなかったので、この倉庫や専用スタッフを雇うのにかけた費用は無駄になりましたけど(笑)。
ずっとグループの中でお荷物扱いされてきた部門に大ナタを振って、筋肉質な部署にできたことに達成感はありました。仕事への意欲がある従業員たちからは、「よくやってくれた、ありがとう」とすごく感謝されました。僕、フランスでこの仕事で食っていけるかもとさえ思いました(笑)。
人から感謝されることの喜びを知り、次のキャリアへ
■もう二度と巡り合えないだろう貴重な経験
ヨーロッパでのリストラの仕事は、確かに辛いことではありましたが、商社に勤務した15年間の中で一番やりがい、達成感があった仕事でもありました。今後、あんな仕事には、なかなか巡りあえるものじゃないなと思っています。
誰かに感謝されたということなのかな。辛いミッションでしたが、最終的には、みんな「ヒロ、ありがとう」と言ってくれました。そのときに、「誰かに直接貢献できて、感謝してもらえる仕事っていいな」「人と触れ合う仕事って価値があるな」と思いました。
■日本に帰国後、現在の仕事についた理由
日本に帰国後、転職を経て、生命保険の仕事に就きました。商社勤務時代から自分の将来のキャリアに「経営コンサルティング」という仕事を描いていたのは事実ですが、当時は保険の仕事をするつもりは全くありませんでした。ただ大企業では上層部と方針などにも左右され、自分ができることが限定されることもあり、独立の道を選びました。同時に自分に感謝してくれる相手が中小企業の経営者でも、子育て世代の家族のお金の相談でもいい。とにかく人がハッピーになるためのお手伝いをしたいと思ったんです。
ヨーロッパ赴任中に1人1人の従業員と胸襟を開いて話し合い、多くの方々の人生に向き合ったご経験から、現在の保険の仕事を通して「高橋さんと一緒にいたら、うちの家族は安泰だ、良くなったね」と言ってもらえたら嬉しいと語ります。