こんにちは、大内です。
皆さまは日々、様々な人と関わる中で「わかってほしい」という気持ちになることはありませんか。
私は仕事上、さまざまな方からお悩みを聴かせて頂くことがありますが、「解ってもらえて嬉しい」とほっとしたお顔や涙を浮かべるお顔を見て、いつも思うことがあります。
ああ、理解されることは、存在を肯定されることなのだと。
私たちは「わかってくれている」と感じたとき、「ああ、私はこれでいいんだ」と思えるものです。理解することは、その人の存在そのものを受けとめる、静かな愛のかたちなのかもしれません。
「人は理解されたと感じたとき、初めて自分を開き、他者を理解しようとする。」
―カール・ロジャーズ(心理学者)―
この言葉が示すのは、理解されることの癒しの力。
「わかってほしい」と思う気持ちは、満たされれば喜びや幸せを感じ、わかってもらえなければ残念な気持ちや悲しみを感じることもあるでしょう。
自分の話をちゃんと聴いてもらえた、気持ちを汲んでもらえたと感じたとき、人ははじめて心を開くことができます。
そして自分自身もまた、相手を理解しようという思いと余裕が生まれてくるのです。
「世界の不幸や誤解の四分の三は、敵の懐に入り、彼らの立場を理解したら消え去るであろう。」
―マハトマ・ガンジー―
私たちが人間関係で感じるもどかしさや苦しさの多くは、「わかり合えないこと」から生まれます。
「どうしてわかってくれないんだろう。」
そう思ったことがない人はいないでしょう。
しかし孔子は、こんな言葉をのこしています。
「人の己を知らざることを患えず、人を知らざることを患う」
―孔子—
これは「人は自分を理解してくれない」と嘆く前に、「自分は人のことをどれだけ理解しているだろうか」という問いかけの言葉です。耳に痛い反面、ハッとする人もいるかもしれません。
私たちは誰かに「理解されたい」と願いながらも、
「では、自分は本当に相手を理解しようとしているだろうか?」
そう問われると、どうでしょうか。
大切な人との会話の中で、つい言葉をかぶせてしまったり、自分の正しさを伝えたくなったりする瞬間もあるかもしれません。そんなとき、心の奥にある「わかってもらいたい」という気持ちが、声になって飛び出してしまうこともあるでしょう。
また、「わかってあげたい」という気持ちが強くなり、それが「解決してあげたい」「助けてあげたい」にすり替わってしまうこともあります。
すると、いつの間にか解決策の提案やアドバイスをしてしまって、気持ちに寄り添う理解から遠のいてしまうこともあるでしょう。
相手の感じていたことを本当に理解しようとする前に、自分の解釈で自分が感じた気持ちを伝えてしまうこともあるかもしれません。
「誰かを本当に理解するということは、その人の立場から物事を見ようとすることだ。」
―スティーブン・R・コヴィー(「7つの習慣」より)—
私はこの言葉に触れるたびに、「聴くこと」「理解すること」の意味を問い直されます。
理解とは、相手の目で世界を見ようとする姿勢だと私は思っています。
たとえ自分と違う価値観を持っていたとしても、「この人には、この人の世界がある」と受け止めること。
その人がその人の世界観で、何を見て、どう感じ、どんなことを思ったのか。
自分のフィルターを通して判断をするのではなく、相手の立場になって感じ、受け取ろうとすること。
そこには、“正しさ”ではなく、“相手の思いや感性を大切に尊重しようとする心“があります。
「他人の人生に立ち入らずに、それを理解することができたとき、あなたはその人を本当に尊重している。」
―デイヴィッド・オグルヴィ―
私たちは時として、「理解」と「同意」を混同することがあります。
相手の気持ちを「理解すること」を、「同意すること」とイコールに考えてしまうと、ほんの少しでも同意できない部分があることは「理解できない」ということになってしまうでしょう。
自分と相手の意見が異なる時、相手の意見を理解することが相手に同意することだと思ってしまえば、「相手の意見を理解する=自分の意見が間違っている」という意味にもなりかねません。
そう思うと、完全に同意できる話でない限り相手を「理解できない」と感じ、「自分の意見を伝えなければ」「自分の正しさをわかってもらわなければ」という考えに飲み込まれ、いつの間にか「相手を理解する」ことから離れてしまうことがあります。
言うまでもありませんが、相手の考えを理解しようとすることは、自分の意見を否定することではありません。
理解と同意は別物です。
「相手は間違っているかも知れないが、彼自身は、自分が間違っているとは決して思っていない。
だから、相手を非難しても始まらない。
非難は、どんな馬鹿者でもできる。
理解することに努めねばならない。
賢明な人間は、相手を理解しようと努める。」
―デール・カーネギー―
「同意は出来ないけれど、あなたの考えや感じたこと、そこにある背景は理解できる」
「そういう考えもあるんだね」
「その感情には、何か理由があるんだね」
ただ、それだけでも良いはずなのです。
「あなたが正しいとき、誰かの心を閉ざすことがある。あなたがやさしいとき、誰かの心は開かれる。」
―ルーミー―
私たちは、ときに正論で人を説得したくなるときがあります。
でも、関係が深まるのは、「正しさ」よりも「やさしさ」があるとき。
自分の正しさを「わかってほしい」と思ったとしても、正しさを押し付けてしまえば相手の心を閉ざすことになりかねません。
相手にとっての“正しさ”も、いったん受け入れてみること。
理解することによって、相手の思いに居場所をあげること。その上で対話すること。
それが、より深く心の扉を開く第一歩になるかもしれません。
「誰かを理解するには、その人の中にある“光”だけでなく“影”も見る必要がある。」
―ユング―
本当にその人を尊重するというのは、相手の話が自分にとって、たとえ遠回りや間違っているように見えたとしても、その人がそう思った理由がある、背景がある、想いがあるということを尊重し、見守る勇気を持つことでもあると思います。
相手の良い面だけでなく、未熟さや不器用さ、弱さをも含めて理解する。
その上で、相手が自分で解決できる力を持っていることを信じ、必要以上に手を出さず、相手の考えや選択、行動を信頼して見守ること。
これは相手を理解することであると同時に、自分の境界や器を広げることでもあります。
誰かの中にある「自分とは違う」ものを受け入れようとするとき、私たちは心の柔軟性が問われているのです。
「平和は、力によっては維持されない。それは、理解によってのみ達成される。」
―アルベルト・アインシュタイン―
表面的な情報のやり取りではなく、見ようとしていなかった世界を見ること。
耳だけでなく、心で聴くこと。
相手の立場からものを見てみること。
そしてときには、自分の痛みと向き合いながら、なおも相手に手を伸ばすこと。
それは、優しさであり、強さであり、勇気でもあります。
これまで「話を聴く」「理解する」ということは、ごく普通のことで当たり前にできていると思っていたかもしれません。
しかし今一度、ここで改めて本当に「相手の話を聴く」「理解する」ということに、心を傾けてみませんか。
それはきっとあなたの世界を、内側から変えてくれる一歩になることでしょう。
【大内順加 プロフィール】
大内順子
1979年生まれ、二児の母。
心理カウンセラー/ライフコーチ・コミュニケーショントレーナー
大学では臨床心理学を専攻。大手広告代理店勤務を経て出産。育児中は認知行動療法を専門的に学ぶ傍ら、教育・育児関連のライター・在宅編集者に。ライフスタイルマガジン、情報サイトの記事企画・執筆、インタビュー取材、現地レポ作成なども行う。心理系コラム連載、日本アンガーマネジメント協会認定キッズインストラクターとしても活動する。
その後、認知行動療法、認知心理学・機能脳科学、ストレスマネジメントに関する書籍を3冊出版。(ペンネームは大内順加)心理系記事の監修もおこなっている。
現在は心理カウンセラーとして認知行動療法・スキーマ療法・ゲシュタルト療法・アドラー心理学をおもに用いた心理カウンセリングセッションのほか、ライフコーチとして認知心理学と機能脳科学に基づいた自己実現コーチングを提供中。
また、モチベーション&コミュニケーションスクール講師として、日本全国で企業研修やセミナーを毎月多数実施している。
◆ホームページ:カウンセリングルーム「きもちの居場所Utari」
➔https://juncoolo55.wixsite.com/website-1
◆ブログ:「きもちの居場所―幸せをつかむチカラ磨き―」
➔https://ameblo.jp/utari-atuy
◆書籍「人生を変える無意識の使い方―なりたい自分に必ずなれる!―」ほか
➔https://www.amazon.co.jp/dp/B08KDP7V56/
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