こんにちは、大内順子です。
冷たい風に思わず肩をすくめるような日々ですが、皆さまはいかがお過ごしでしょうか。
寒さは厳しくも、梅の蕾がほころび始め、冷たい空気の中にわずかなやわらかさが混じり出す頃になりました。
春はまだ遠いようでいて、それでも確実に近づいている。
私たちの人生にも、どこかそれに似ている時期があると感じることがあります。
前に進んでいるのか分からない日もあるけれど、見えないところで何かが静かに移ろっている時期。
そんな不安や迷いの中にとどまりながらも、その状態を抱え続ける力のことを、心理学では「ネガティブ・ケイパビリティ」と呼びます。
すぐに答えが出なくていい。
意味が分からなくてもいい。
何も結果や形にならなくてもいい。
はっきりしないままの時間に耐え、結論を急がず、分からなさと共にいること。
それは外からは何の変化もないように見えますが、「見えない場所で何かが静かに育っている」とても大切な時間です。
しかしこの時間には、不安も伴います。
そのため、多くの人が早く抜け出したくなります。
意味をはっきりさせたくなり、形にしたくなり、結果にして安心したくなるのです。
私は仕事柄、さまざまな方のこの時期に立ち会わせていただくことがありますが、
ほとんどの方がこの時間を「通過点」ではなく「停滞」だと不安を感じてしまい、
無理に結論を出そうと焦ってしまう傾向があると感じています。
一見、何も起きていないように見える。
だから、そのまま留まるのは苦しい。
けれど実は、表に出る変化の前に、いちばん大切なプロセスが内側で進んでいる時間。
芽が出る前、土の中ではすでに変化が始まっているように。
見えないから不安になるけれど、見えないところで命はしっかりと根を張り、土台を作り、静かに力を蓄えています。
「冬来たりなば、春遠からじ」
― パーシー・ビッシュ・シェリー ―
私たちは人生が順調なとき、未来の話ができます。
自分の調子の良いときは、目標や希望、やりたいことやワクワクする未来も自然に浮かぶでしょう。
「次はこうしよう」
「これを叶えたい」
そんな言葉が、自分の中から素直に出てきます。
けれど人生には、先のことを考えようとすると、心と身体が止まってしまう時期もあります。
未来の話をしようとすると、不安が先に立つ。
希望よりも、恐れの方が大きくなる。
ただ今日をやり過ごすだけで、精一杯になってしまう。
そんなふうに、人生には時々、地図が突然消えてしまったような瞬間が訪れることがあります。
予定していた未来が崩れたり、大切なものを失ったり、どうにもならない出来事に巻き込まれてしまったり…。
どれだけ前向きに生きていても、どれだけ準備をしていても、時として抗えない現実が訪れることもあるでしょう。
そんなとき私たちは、「どうしたらいいか」より先に「もう無理かもしれない」という感覚に飲み込まれてしまいがちです。
先が見えない。
明日のことすら想像できない。
何とかしようと思うのに、一歩踏み出す気力も湧いてこない…。
そんな夜もあるでしょう。
ただ今日をやり過ごすだけで精一杯な日も、不安にのまれて眠れない夜だってあります。
けれどどうか、誤解しないでほしいのです。
その状態は、あなたが弱いからでも、何か間違っているからでもありません。
心が動けなくなるのには、理由があります。
体が力を失うのにも、意味があります。
それは怠けでも甘えでもなく、あなたの心と神経が、これ以上傷つかないようにと必死にあなたを守っている防衛反応です。
だから責める必要はありません。
無理に前を向こうとしなくていい。
まずはただ、ここまで生きてきた自分に「よく持ちこたえてきたね」と言ってあげてほしいと思います。
たとえ止まっているように見える時間の中でも、心は静かに回復しようとしています。
そしてその時間の先に、人は以前よりも深く強い「生きる力」と出会っていくのです。
それは、人が本当の意味で「生きる力」と出会う入口に立っているかけがえのない時間なのだと、私は思っています。
「人間からすべてを奪うことはできても、最後の自由だけは奪えない。
それは、どんな状況にあっても、自分の態度を選ぶ自由である。」
― ヴィクトール・E・フランクル ―
状況を変えられないときでも、私たちは「どう在るか」だけは選べます。
強制収容所という極限状態を生き延びたフランクルの言葉は、私たちがどんなに過酷な状況に置かれたとしても、どんな自分としてそこにいるかは自分で選べるということを教えてくれます。
しかし、どん底にいるときには、そんな言葉が綺麗ごとに聞こえることもあるでしょう。
「態度を選ぶ余裕なんてない」
「今は立つことすら無理」
それも、本当です。
そんなときに必要なのは、強くなろうとすることではなく、「弱っている自分をありのまま認める」こと。
「こんな自分じゃだめだ」と今の自分を否認することではなく、「今はこういう自分で、こんな時もある」と、一旦そのままを受け容れることです。
「私が私自身をあるがままに受け入れたとき、私は変わることができる。」
― カール・ロジャーズ ―
人は自分を否定すると、心が緊張します。
「変わらなきゃ」「ちゃんとしなきゃ」と自分を追い立てるほど、心と体は「危険な状態だ」と判断し、防衛を強めてしまう仕組みがあります。
だから変わる前に必要なのは、努力でも根性でもなく、「こんな状態の自分でもいい」と自分に居場所を与えること。
すると心は緊張をゆるめ、防御を少しずつ下ろしはじめます。
そのとき初めて、人は前に進むためのエネルギーを取り戻せるのです。
今は泣いている自分でもいい。
動けない自分でもいい。
未来が見えないまま立ち尽くしている自分でもいい。
そう自分を受け容れられると心は安心を取り戻し、再び力を蓄え始めます。
その安心こそが、もう一度歩き出すための土台になるのではないでしょうか。
「変化とは、受け入れの後に訪れるものである。」
― フリードリヒ・ニーチェ ―
私たちは傷ついたとき、無意識に心を閉じることがあります。
それは弱さではなく、心が自分を守ろうとする自然な防衛反応です。
痛みから早く抜け出したい。感じないようにしたい。なかったことにしたい。
そう思うのは、とても自然なことです。
しかし実は、痛みは敵ではありません。心が回復しようとしている途中に起きる自然なプロセスです。
「抜け出す唯一の道は、通り抜けることだ。」
― ロバート・フロスト ―
痛みやつらさを感じないようにするのではなく、ただそのまま少しずつ通り抜けていくこと。実はそれが、一番早い抜け出し方である場合が多いです。
無理に消そうとしなくていい。急いで終わらせなくていい。
通っているその時間そのものが、あなたを次の場所へと運んでいる途中なのです。
「冬の真っただ中で、私は自分の中に不屈の夏があることを知った。」
― アルベール・カミュ ―
そして光は、たとえ外からは見えないときでも、内側で消えていないことがあります。
あなたの中の「夏」は、冬の間ただ、静かに息をひそめているだけなのかもしれません。
「本当に美しい人とは、苦しみを知り、葛藤を知り、喪失を知り、そしてそこから立ち上がった人たちのことだ。」
― エリザベス・キューブラー・ロス ―
「人格は、安楽や静けさの中では育たない。
試練と苦しみの経験を通してのみ、魂は強くなり、志は高まり、成功は得られる。」
― ヘレン・ケラー ―
どん底の経験は、あなたの価値を下げるどころか、あなたの深みを増していきます。
その時はそう思えなかったとしても、その時間は、あなたの人格の奥行きを静かに育てていることでしょう。
そして強さとは、歯を食いしばって立つことだけでなく、「助けて」と言えること。
「今日は休む」と決められること。「まだ無理」と正直でいられること。
それもまた、強さのひとつです。
どうしても未来が見えないときは、無理に未来を見ようとする必要はありません。
今日の足元だけ見て、次の一歩だけ選べばいいときもあります。
泣きながらでもいい。怖いままでもいい。
それでも歩こうとするその姿勢こそが、もうすでに「生きる力」なのだということを、どうか忘れないでください。
明日が見えない夜こそ、人生の深いところを生きている証。
そしてその歩みは、もう十分に尊いのです。
「どんなに暗い夜も、やがて終わり、太陽は昇る。」
― ヴィクトル・ユーゴー ―
【大内順加 プロフィール】

大内順子
1979年生まれ、二児の母。
心理カウンセラー/ライフコーチ・コミュニケーショントレーナー
大学では臨床心理学を専攻。大手広告代理店勤務を経て出産。育児中は認知行動療法を専門的に学ぶ傍ら、教育・育児関連のライター・在宅編集者に。ライフスタイルマガジン、情報サイトの記事企画・執筆、インタビュー取材、現地レポ作成なども行う。心理系コラム連載、日本アンガーマネジメント協会認定キッズインストラクターとしても活動する。
その後、認知行動療法、認知心理学・機能脳科学、ストレスマネジメントに関する書籍を3冊出版。(ペンネームは大内順加)心理系記事の監修もおこなっている。
現在は心理カウンセラーとして認知行動療法・スキーマ療法・ゲシュタルト療法・アドラー心理学をおもに用いた心理カウンセリングセッションのほか、ライフコーチとして認知心理学と機能脳科学に基づいた自己実現コーチングを提供中。
また、モチベーション&コミュニケーションスクール講師として、日本全国で企業研修やセミナーを毎月多数実施している。
◆ホームページ:カウンセリングルーム「きもちの居場所Utari」
➔https://juncoolo55.wixsite.com/website-1
◆ブログ:「きもちの居場所―幸せをつかむチカラ磨き―」
➔https://ameblo.jp/utari-atuy
◆書籍「人生を変える無意識の使い方―なりたい自分に必ずなれる!―」ほか
➔https://www.amazon.co.jp/dp/B08KDP7V56/
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